光のもとでⅠ
「車あたためておくから、その上に俺のジャケット羽織って出てきちゃいな」
 秋斗さんは壁にかけられていたジャケットを手に取ると、私の肩にかけてくれた。
「テーブルにカモミールティーがあるよ。猫舌さんにも飲みやすい温度だから、ゆっくり飲んでから出ておいで」
 秋斗さんの背を見送ると、蒼兄に声をかけられお茶に視線を向ける。
 白いダイニングテーブルには耐熱ガラスのカップが置かれていた。
 少し退色し始めているけれど、手で触れるとまだ淹れられてからそんなに時間が経っていないとわかる温度。
 椅子に座りそれを口にすると、心がほっと休まった。
「わかりやすい優しさと、わかりづらい優しさ……」
「ん?」
 唯兄に顔を覗きこまれてはっとする。
 曖昧に笑ってごまかし、蔵元さんに視線を移す。
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