光のもとでⅠ

43

「自分の携帯にかけるのに何緊張してるんだか」
 蒼兄の言葉に背を押され、そうだよそうだよ――と自分を勇気づける。
 でも、コール音が鳴り始めると心臓がドドドド、と駆け足を始め、それだけで息が上がりそうになる。
 五コール鳴らしたらつながった。
 その、たったの五コールがひどく長く思えた。
『何……』
 え? 今、何って言われた?
 今まで何度かツカサに電話をかけたことがあるけれど、出て早々に「何」と言われたことはない。
 あまりの素っ気無さに声を発することができなくなった。
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