光のもとでⅠ
 言われたとおりにキッチンで氷水を用意して戻るも、水を飲めるような状態ではなく、かなり呼吸が荒くなっていた。
「翠葉ちゃん、しっかり息を吐き出して、ゆっくり呼吸しよう」
 栞ちゃんはゆっくりとリズムを刻むように背中を叩いてあげていた。
「吸って、吐いて、吸って、吐いて――」
 背中を叩くリズムに合わせて口にするけれど、その言葉が彼女に届いているのかはわからない。
 そこへ湊ちゃんが帰ってきた。
「翠葉ー? 点滴するわよー」
 玄関に入った時点で尋常ではない呼吸音が聞こえたのか、かばんを放り出して部屋に入る。
 翠葉ちゃんの部屋の入り口に置かれているアルコールジェルで除菌を済ませると、すぐにベッドへ駆け寄り彼女の肩を強く揺さぶり大きな声で名前を呼んだ。
「翠葉っ。苦しいだろうけど意識してゆっくり呼吸しなさい」
 湊ちゃんの言葉は聞こえているようだけど、彼女が口から手を外す気配はなかった。それを湊ちゃんが力ずくで剥がす。
 すると、その手は奇妙な形で固まっていた。
 びっくりしていると、栞ちゃんに声をかけられた。
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