光のもとでⅠ
「いえ……。むしろ、そんなに長い期間想われていたお母さんを羨ましいと思うくらい……」
 そう答えると、今度は無言で微笑んだ。
 逆にお父さんは苦渋を漏らす。
「翠葉ぁ……肉食獣に奥さんを始終狙われていたお父さんはだな、胃が擦り切れるくらいに肝を冷やす二十七年だったぞー?」
「碧、感謝してほしいものだな。おかげで零樹は中年太りもせず、あの頃の体型を維持したままだ」
「あら、そう言われてみればそうね?」
「ちょっとちょっとちょっと、おふたりさあああんっ!?」
 その会話に場がどっと沸く。
 みんなの笑い声が響く朝食だった。
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