光のもとでⅠ
「ははは……また甘いって言われちゃうかもしれないんだけど、でも……翠葉は全然悪気なんてないんです」
 言いながら、すまなそうな顔をして俺を見る。
「それはわかってるんだけどね……。俺の幸せってものを彼女独自の思考回路で考えてくれたんだろうな、ってことくらいは」
「でも、それ……お門違いもいいところね」
 と、栞ちゃん。
「そうなんです……。なんかもう、ことあるごとに手のかかる妹で申し訳ないです。なので、今回過呼吸おこしたのって秋斗先輩は悪くないんですよ。あいつがひとりでてんぱっちゃってるだけだから」
 と、フォローをされた。
 いや、フォローされてもねぇ……。俺が虚しいだけです。
「それでなんですが、翠葉、謝りたいみたいなんだけど、今は言葉が見つからないようで、後日……でもいいでしょうか?」
 こんな約束を取り付けようとするのだから、蒼樹のシスコンは筋金入りと言われても仕方がないと思う。
「それは全然かまわないよ。俺も謝りたいしね」
「……翠葉、このまま会えなくなっちゃうんじゃないかってすごく気にしてて」
 それこそ杞憂だ。
「……わかった。あとでメール送るよ」
「お手数おかけします」
 そんな会話の末、司が思わぬことを口にした。
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