光のもとでⅠ
「でも、お願いが……。本人にはコミュニケーション能力が低いとは言わないでほしいんです。たぶん、翠葉は自分自身でも薄々気づいているようで、今は人とどうやって接していくべきなのか模索しているところなので……」
「あえて伝えることでもないでしょ」
 湊ちゃんが答えると、俺と司と栞ちゃんが頷いた。
「助かります。でも、何かズレが生じてると思ったときには指摘してやってください。俺も両親も、翠葉のあれこれには慣れてしまっていて時々見過ごしてしまうので。それに、何もかもから守ってやらなくちゃって動いている俺にも原因はあるので」
 きっと蒼樹も自分が過保護であることには気づいているし、それをどうにかしなくちゃいけないこともわかってる。
 彼女が高校へ通うようになって彼女の世界が変わったと同時に、その変化に自分も対応させるべくもがいているところなのだろう。
「思うんだけどさ、蒼樹も翠葉ちゃんもご両親も、誰も悪くはないと思うよ。うちは海斗も俺も元気だし、両親も元気だからそういう家庭でのことはわからない。でも、環境が人を育てるのは確かだし、境遇は選べないだろ? そのうえで成り立っている家族だから、どんな形でも間違いではないし、どんな思いがそこに派生したって誰かが何を言うことはできないと思う。本来ならそのバランスをとるために社会があるわけだけど、彼女はそこに出て行けない理由があったわけだし、誰が悪いとかどうだからって話じゃない」
「秋斗の言うとおりよ。蒼樹、人って変わるのよ。良くも悪くもね。だから、翠葉だってあんただって、これから変わる可能性は無限大よ? んな辛気臭い顔してるんじゃないわよ」
 湊ちゃんが言うと、栞ちゃんが珍しい言葉を添えた。
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