光のもとでⅠ
 慌てて顔を上げると、観覧席まではまだ三メートルほどあった。
「ツカサの嘘つきっ」
「あぁ、今始めて嘘をついたかもな。……っていうか、情緒不安定にもほどがあるだろ? 昨日から何度泣いたら気が済むんだか……」
「そんなこと言われても、涙腺壊れたみたいに勝手に出てくるっ」
 そうこう話しているうちに観覧席に着いた。
「座って」
 ツカサに促されてコンクリートの観覧席に座ると、次の瞬間、バサ――。
 視界が一気に暗くなった。
 たぶん、これはツカサのマントの中。
 額がツカサのお腹あたりに当たっていて、マントの上から頭を抱えられていた。
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