光のもとでⅠ
「翠、すごい我慢してるから」
「……何を?」
「気持ちを」
 気持ちを……?
「秋兄のこと、すごく好きで……でも、それでも諦めようって思うくらいには秋兄の幸せ願ってて、それで断ったから。だから、それ相応には体に負担がかかったはず」
「……おまえそれ――」
「翠から直接聞いたから間違いない。だから……今回の件はちゃんと翠の気持ちだったと思う」
 司に言われて何も言えなくなった。
「確かに自分のことを少し卑下しすぎな部分は否めない。でも、今回は少し考え方を誤っただけで、翠は心から秋兄にとってそれがいいと思って口にしただけだ」
 視線をローテーブルに固定して淡々と述べる。
「……わかってはいるつもりなんだけど。正直余裕なくて怒っちゃったんだ」
「……秋兄が誤解してないなら別にかまわない」
「もしさ、もし司が翠葉ちゃんに俺と同じことを言われたらどうした?」
「……別にどうもしないけど」
「どうもしないって……?」
「翠がどう思っていようと関係ない。俺は翠が好きなわけでほかの人間を好きになる可能性なんてないわけだから」
 さらりと言ってのけやがった……。
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