光のもとでⅠ
「姫ーっ!?」
「今、絶対にいたよな?」
「いたいた。あれー? アリスの格好って暗くっても意外と見つけやすいはずなのに」
 声が聞こえてこなくなると、口から手が外された。
「行った?」
「行った」
 階段を上がってからずっと早歩きを続けていたからだろうか。
 少しだけ吐き気を感じていた。
「ツカサ――」
 口を開きかけたとき、新たなる声が聞こえ、言葉を呑み込むようにして口を閉じた。
 何かうっかり口にしてしまいそうで、両手で口元を押さえる。
 すると、ただでさえ密着していた身体をさらに引き寄せられた。
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