光のもとでⅠ
「翠葉、キョロキョロしっぱなし」
 飛鳥ちゃんに笑われて白状する。
「あのね、カラオケボックスに来るのが初めてなの」
 周りにいた人たちに驚かれたけど、「まぁ、翠葉だしね」の一言で片付けられた。
「あの……優太先輩、ツカサも――ツカサもここに来るんですか?」
 一番最後に戻ってきたツカサは、十月末だというのに汗をびっしりとかいていた。
 全校生徒から逃げるためにそれだけ走ったのだろう。
 けれど、私はそんなツカサに声をかけることもできずに図書室をあとにした。
「うーん……それ、すっごく難しいな。そもそも、今までこういうのに司が来たことってないんだよね」
 思い切り苦笑いだった。
 でも、そう言うのもわからなくはない。
 ツカサはきっと、こういうお祭り騒ぎは好まない。
 人が大勢いるところを好みそうにない。
 ましてや学校外ならなおのこと……。
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