光のもとでⅠ
「……俺が気持ちを伝えたところで翠に好きな男がいる事実は変わらないだろ?」
 ツカサから直に言われて涙が零れる。
 ゆっくり歩いてきたけれど、坂道だからか半分も歩いたら息が上がっていた。
 すぐにでも、私の好きな人はツカサだと言いたいのに息継ぎがうまくいかない。
 歩いている状態では無理そうだったから歩みを止めた。
「翠、具合が悪いなら無理はするな」
 ツカサはかばんを手にしていない左手を差し出してくれる。
 私はその手を乱暴に取り、「そうじゃなくて……」と短く言葉を足す。
 息を整えつないだ手にぎゅ、と力をこめる。
 そうでもしなかったら、言葉を発せそうにはなかった。
< 6,146 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop