光のもとでⅠ
「まだほかにもある。光を嬉しそうに見る翠葉ちゃんとか、髪の毛がきれいな翠葉ちゃんとか、無防備すぎる翠葉ちゃんとか、藤山で甘えてくれた翠葉ちゃんとか、いつも自分の体と闘っている翠葉ちゃんとか――」
「それ以上言わないでくださいっ……」
 案の定、途中で遮られたか。
 そのうえ、手で顔を隠してしまった。それでも、首筋まで隠せるわけじゃない。
 全部を隠せるわけじゃないのに、両手で必死に顔を隠す彼女が愛おしくて仕方がない。
 彼女の両手に手を伸ばし、「これだけ伝えればわかってもらえる?」とその手を剥がす。
 かなりの至近距離で逃げ場など作らずに視線を合わせる。と、彼女の目はゆるゆると揺れているものの、視線を合わせたまま、
「――あの、ひとつだけ訂正してもいいですか?」
「……何?」
「…………少し、じゃなくて……すごく、です」
「……え?」
 訊き返したら、ぎゅっと目を瞑った。
 ……あのさ、翠葉ちゃん――。
「少しじゃなくてすごくって……それにかかる言葉は"好き"でいいのかな?」
 真っ赤な顔をして目を瞑ったままコクリと頷く彼女。
 やばい……俺、かなり嬉しいかも――。
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