光のもとでⅠ
「ご覧のとおり、ですかね。体は起こせなくて……」
 翠は少し体の位置を変え、俺が見える位置に移った。
「薬に慣れるまでの数日だろ? それまでは我慢するんだな」
「はい……早く、学校に行きたい」
 切実そうな声音……。
「無理して行ってもいいことはないだろ。今週いっぱいは休め。海斗たちもその内来るから」
「でも、来てもらってもこの状態なんですけどね……」
 と、少し困ったように笑う。
「会えないよりは会えたほうがいいのかと思ったけど?」
 尋ねると、何か考えるふうだったのに、突拍子もないことを口にした。
「司先輩は窓際が好きですか?」
 相変わらず話が飛ぶ……。この話の飛躍ぶりはどうにかならないものだろうか。
 でも、よく見てるな……。
 俺が窓際に座るのを見る機会なんてそうそうないだろうに。
 そして、見てくれていたことに少し嬉しさを覚えた。
「なんとなくってだけ」
「私も窓際が好き……。空を見ると落ち着くんです。それに、陽の光や風を感じることができるから、だから好き……」
 びっくりした。理由まで同じだとは思わなくて。
 俺はギリギリ不自然にならないタイミングで、「右に同じく」と口にする。
 翠はというと、まじまじを俺の顔を見ていた。
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