光のもとでⅠ
「先輩は好きな人いますか?」
「っ――何を急に」
「なんとなく、です。でも、女の子が苦手って言ってましたよね」
 頼むから、心臓に悪いタイミングで突拍子もないことを言ってくれるな。でも、いい機会かもしれなかった。
「……女子は苦手。でも、例外はいるし好きな人もいる」
「…………桃華さん?」
「…………むしろなんで簾条の名前が挙がるのか訊きたいんだけど」
 今自分がどんな顔をしているのかには少し自覚があった。
 翠は俺の表情を無視して話を続ける。
「だって、先輩と桃華さんって息がぴったりな気がして……」
 その直後、
「眉間にしわ……あとが付いちゃいそう」
「そしたら翠のせいだから」
 間を開けずに責任転嫁を試みる。いや、今の件に関してだけなら翠のせいに間違いはない。
「……それはどうかと思います。だって、先輩はいつも眉間にしわを寄せてるもの」
 それには言い返せるものがなかった。黙っていると、話はまた恋愛話に戻される。
「でもね、先輩の恋愛はうまくいきそう」
「どうしてそう思う?」
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