光のもとでⅠ
「次は、お手を拝借、かな?」
 彼女の手を取り上に引き上げる。
 立ち上がった彼女はまだ顔を赤く染めてはいるものの、さっきよりは目に力があり、幾分かいつもの調子を取り戻していた。
「こんな日でもないと桃華の彼氏って高等部の人間に見せつけられないでしょ?」
 大学の構内カフェではよく会うものの、そこに高等部の生徒がくることはあまりない。
 したがって、こんな機会でもない限り、自分という存在を誇示することはできない。
「……あぁ、俺、やっぱり桃華は自分の彼女だって誇示したいんだ」
 思ったことを口にすることで考えが明瞭になる。
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