光のもとでⅠ
 こんなときになんだけども、模写したい模写したい模写したい……。
 佐野くんを模写したいっ!
 眼力スキャン全開で脳内フォルダに保存して、とっとと紙に起こしたい衝動に駆られる。
「自分、すごい不毛な恋してるなと思ってたけど、ここにも同じ人間がいたんだな」
「そうだよ……不毛上等っっっ」
 思わず、声にも拳にも力が入る。
「だって、好きなものは好きだから。……佐野くんがこれから毎日海斗くんと飛鳥ちゃんのツーショット見ることになって落ち込んでも、まだ飛鳥ちゃんのことが好きなんて不毛な恋をしていても、私だってそんな佐野くんがずっと好きなんだからねっ」
 どんな言い分だろう。
 そうは思うけど、これが七倉香乃子の本音だ。
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