光のもとでⅠ
 佐野くんが目の前にいるのは嬉しいけれど、これ以上見すぎたら容量オーバーっ。
 っていうか、今すぐ手にしたいものは紙と鉛筆。
 なんならシャーペンとルーズリーフでもいいっ。
 来た道を戻ろうとすると、後ろから声をかけられた。
「俺も戻るわ。超ダッシュでね!」
 反射的に振り返ると、その動作の途中でピュン、て音がした。
 音、というか、人。
 人、というか、佐野くん……。
 いつものように無駄のないフォームで走りだし、あっという間に見えなくなる。
「さっすが現役スプリンター」
 速っ……。
「がんばれ、佐野明。――がんばれ、私っ」
 私は走らずにできるだけゆっくりと歩いた。
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