光のもとでⅠ
 男からは鋭い気配は感じなかったものの、今、確実に食えない人間に変わった。
「場所はいつも違う。藤倉を中心に四方に散らばっている。だいたい、電車で一時間から一時間半圏内ってところかな? 君、相当運が悪いんじゃない?」
 にこにこと話す男に、
「えぇ、そのようですね」
 俺も笑顔を返した。
「なぁ、これ、本当に藤宮の生徒?」
 夫と名乗ったその男は、俺を指差し妻に向き直る。
「玉ちゃん、人を指差しちゃダメっ。それに、秋斗くんはこの学園の歴とした生徒っ」
 そう断言した。
「ふーん、ずいぶんとかわいげのない子どもだな」
 どうやらそれが俺の第一印象になったようだ。
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