光のもとでⅠ
 身体が感じるという意味では誰とやってもそれなりの性的快楽を得られるだろう。が、心が満たされることはない。
 それを教えてくれたのは佳範さんだったけれど、当時の俺は理解とは程遠い場所にいて、理解をしようとすらしていなかった。
 でも、それはものすごく単純なことだった。
 佳範さんが「わかってしまえば言葉にするのもばかばかしいぞ」と言ったくらいには。
「でもな、愛している人には態度や言葉にしてきちんと伝えたほうがいい。その人にだけは心も身体も解放する。そしたら心は満たされる」
 そう教えてもらった。
「ただ、俺は愛し方を知らないようです」
 四月に出逢って彼女が記憶をなくすまでの話をすると、なっちゃん先生は「バカね」と小さな拳で俺の頭を小突いた。
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