光のもとでⅠ
「なんでもそつなくこなしてきたのに、こんなときに不器用全開だなんて」
 そう言うと、細い腕を俺に回し、ぎゅっと抱きしめられた。
 こんなふうにされるのは久しぶりだな……。
 翠葉ちゃんと別れた日、湊ちゃんにも同じようなことをされた。
 心がこもった人のぬくもりはひどくあたたかいと感じた。
「なっちゃん先生、俺、まだ死にたくないんだけど……」
「え? 何か病気なの?」
 心配そうな面持ちで俺を見上げる。
「違います……。こんなとこ佳範さんに見られたら、俺、殺されかねないでしょ?」
「……そうね。瞬殺ものね?」
「だから、この腕は解いてください」
「はいはい。少し慰めてあげようと思ったのに」
 なっちゃん先生はぶつくさ言いながら俺から離れる。
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