光のもとでⅠ
 個別通信? ……なんで今?
 そう思いながらも緊急時に備えてチャンネルを変える。
 チャンネルを見てすぐに朝陽だとわかった。
『今、愛しのお姫様を会場にお連れしたところなんだよね。賭けに自信があるならぜひとも彼女を見つめて歌ってもらおうか?』
 どこまでやらせれば気が済むんだか……。
 そうは思いつつも、唇を読まれない状態を作り通信に応じる。
「別にかまわないけど……。どうせ、そういうのも映像班が全部記録に撮ってるんだろ? だとしたら、姫と王子の出し物の演出とでも言い逃れはできる」
『相変わらず抜け目ないことで……。それでおまえは伝えようって気にはならないわけ? 逃げるんだ?』
「逃げ、か……。少し前まではそうだったかもな」
 一番最初に「逃げている」と指摘してきたのは簾条だったか。
 ふとそんなことを思い出した。
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