光のもとでⅠ
 でも、もうその必要もない。
 何者からも逃げる必要はなくなった。
 そう、翠自身からも――。
「逃げる必要がなくなった。朝陽、翠の鈍感がもう少し軽減されていたら少しの望みはあったかもな。何をしたとしても、賭けは俺の勝ちだ」
 そこまで言うと間奏が終わる。
 表に向き直り、朝陽がいそうな場所に目をやると、円形ステージのすぐ近くに翠がいた。
 さっきと変わらない眼差しで、じっと俺を見ている。
 目を逸らすなよ……。
 そう念じながら翠だけを見る。
 ほかの人間にどう思われようと、どんなふうにカメラに撮られようともかまわなかった。
 それで翠がやっかまれるのなら、俺がそれらを排除すればいいだけだ。
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