光のもとでⅠ
 彼女を会場へ誘導すると、ちょうど間奏に入るところだった。
 今、司のインカムはフォークソング部の人間と同じようにイヤーモニターが流れている。
 そこへ俺は強引に個別通信を入れた。
 側にいる翠葉ちゃんの存在を気にする必要はなかった。
 彼女はステージにいる司に釘付けだったから。
「今、愛しのお姫様を会場にお連れしたところなんだよね。賭けに自信があるならぜひとも彼女を見つめて歌ってもらおうか?」
 司の眉間にしわが寄る。
 ステージジングっぽくマイクスタンドに手をかけ、大胆に身から離す。
 バックのフォークソング部の方を向き、読唇されないようにしてから俺の通信に応じた。
 相変わらず些細なことにも気を抜かないやつ。
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