光のもとでⅠ
『逃げる必要がなくなった。朝陽、翠の鈍感がもう少し軽減されていたら少しの望みはあったかもな。何をしたとしても、賭けは俺の勝ちだ』
 そこで通信は途絶え、最後のサビに入る。
 司は何もなかったように歌い始め、こちらを見た。
 視線の先には彼女――。
 瞬きも忘れてステージを見入る彼女にのみ視線を注ぐ。
 まったくさ……そんなのやってみないとわからないだろ?
 世界には先が見えないことだらけなんだから。
 司、その老人並みに型にはまりきった考え方、少し改めろよ。
 嵐子ちゃんがあらかじめ用意していた司の歌う歌詞カードは、今彼女の手にある。
 でも、無用、かな……?
 彼女の顔がどんどん赤くなっていく。
 頭をよぎったのは体調の悪さ。
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