光のもとでⅠ
 それでも、「恋愛の歌かどうか」ということを考えられるようになったことは進歩だと思う。
 彼女のほんの少しの成長に救われる俺と優太ってどうなのかな。
 そんな翠葉ちゃんにも少しだけ意地悪をしたくなる。
 俺がこんなに苦労することってめったにないんだからね?
 ま、相手が司なら仕方ない、と思うところではあるのだけど。
「そうだね。今頃、意中の子のことでも思って歌っているんじゃないかな?」
 彼女から一切の表情が消えたことに肝が冷える。
 俺、意地悪しすぎた?
 いや、でも――これは嬉しい誤算かもしれない。
「……それは、好きな人、という意味、ですか?」
「そう」
「ツカサ、好きな人……いるんですね。……知らなかった」
 その言葉は、いつもの真っ直ぐな声音とは異なる。
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