光のもとでⅠ
 俺の前ではいつだって何を話すのか決めてから口を開いていたのに、今は不意に出てきた言葉、という感じだった。
 が、その後の一言に絶句する。
「ツカサ、ひどいっ」
 ん? 翠葉ちゃん、今、なんておっしゃいました?
「何も緊張してるからって、私のことを野菜扱いしなくてもいいじゃないっっっ」
 それ、どういう意味かな?
 説明を求めると、こんな答えが返ってきた。
「あのですね、さっき、観客はみんなイモやカボチャ、そこらに転がってる野菜説を説いてくれたんです。で、つまり、今、私はツカサにとって、そこらに転がってる野菜になってるんだろうなぁ……と」
 恐るべし、超純粋培養天然鈍感思考回路――。
 優太、俺たちの敵は司じゃなくて翠葉ちゃんかもしれない……。
 こっちのほうが手強すぎる。
 期待に満ちた俺の心は彼女の言動により一変させられた。
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