光のもとでⅠ
 俺は海斗ほど口であれこれ感情表現できる人間ではない。
 不器用だとは思うがそれで困ったことは――翠と会うまではなかったし、俺なりのやり方は心得ているつもり。
「ツカサ……あのね、私、第四通路へ行かなくちゃいけないの」
「何をしに?」
 壁に預けていた背が少し浮く。
「茜先輩が待っているから」
「……何するつもり? あのふたりのことは俺たちが介入することじゃないと思うけど?」
 翠がふたりを気にしてることは気づいていた。
 図書室でもその話は少ししたけれど、あのふたりはごく一般的な高校生の恋愛相談じゃ済まない。
「話をするって……」
 話なんてしたところで俺たちができることは何もないだろう。
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