光のもとでⅠ
 もしかしたら言葉で伝えるだけじゃ足りないのかもしれない。
「秋斗さんは蒼兄以上に甘い気がします」
「蒼樹と一緒にされるのは嫌だな。俺は兄じゃない。彼氏だよ? 俺に誰が相応しいかは俺が決めることだし、翠葉ちゃんに誰が相応しいのかは翠葉ちゃんが決めることだ。ほかの誰の意思も介入しないよ」
 言って彼女を抱き寄せた。
 華奢だけれど女性らしい体つきの彼女。何度こうして抱きしいめたいと思ったことか……。
 君が許してくれるなら、何度でも体ごと愛して持てるすべての愛情を注ぐんだけど……。
 そしたら君は安心できるんじゃないのかな。
 言葉だけではなく、全身で伝えることができれば――。
 ……でも、その前に色々交通整理をしなくてはいけない。
 彼女のご両親にも交際を認めてもらわなくてはいけないし……。
 それから、彼女には俺にもう少し慣れてもらわないといけない。
 愛撫ともいえないような域であの怯えようだ。最後までたどり着くのにどれだけの時間を要すことか――。
 本当に攻略しがいのあるお姫様だ。
 そんなことを考えていると、胸もとからクスクスと笑いが聞こえてきた。
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