光のもとでⅠ
「大丈夫よ。メイク道具は持ってきているし、目の腫れを引かせるのは得意なの。それなりにアイテムは常備しているわ」
「本当に、大丈夫ですか?」
 不安そうな翠の声。
 けれど、その声は掠れていなかった。
「……言ったでしょう? ステージでは大丈夫じゃないとダメなの。そこはプライド、だよ。翠葉ちゃんはそれ、今飲めなかったから歌う前にはちゃんと飲んでおいてね。ここ、空調がしっかりきいていて空気が乾燥してるから。……さ、行って!」
 翠は動こうとしない。
 ……人の心配をする余裕はあるんだな。なら――。
「翠」
 ふたりのすぐ近くまで歩を進め、翠の手首を掴んだ。
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