光のもとでⅠ
「いつまでもここにいたら茜先輩が五分で戻れなくなる」
 翠の正面に立ち、その顔を見る。
 泣いた、か……?
 いや、涙が頬を伝ったあとは見られない。
 少し目が充血していていつもよりも潤んでいる程度。
「この人は走って戻ってくるつもりだ。それまでに翠は奈落に戻ってる必要があるし、それも飲まなくちゃいけないんだろ?」
 翠の影からクス、と笑う声がして、茜先輩がひょっこりと顔を出す。
 こっちは泣きました、という顔そのもの。
 この顔が五分でなんとかなるとは思いがたいが、口にはしない。
 この人がなんとかすると言うのなら、なんとかなるのだろう。
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