光のもとでⅠ
 曲が終わり、ヒーターの電源を切ろうとしたら、
「私がやる」
 翠はしゃがみこみ、ピアノの足元に置かれているヒーターのつまみに手を伸ばした。
 ピアノの下から出てくると、吹奏楽部の人間が歩み寄ってきた。
「またいつか一緒に演奏しよう?」
 翠はその言葉に一瞬目を見開く。
「あはは、まだ名前覚えてないんでしょ?」
「っ……すみません」
「私は樋口要(ひぐちかなめ)」
「俺は古藤義孝(ことうよしたか)。俺たち三人とも二年だから、あと一年は一緒。また機会作ろうよ」
 古藤が樋口同様に手を出そうとしたとき、咄嗟に自分が動いた。
 まるでふたりを遮るように間を割って入り、昇降機へ向かう。
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