光のもとでⅠ
「……環、この脈拍どう思う?」
 そこには明らかに上昇している血圧と脈拍が表示されていた。心なしか体温も少し上がっている。
「……よくわからないけど、血圧ってこんな低いっけ? 脈拍はすごいことになってるけど」
「あぁ、うちの妹、普段の血圧が上八十くらいなんだ。冬になれば九十近い数値をキープできるんだけど、今はもっと低い」
「……つまり、今はいつもよりも血圧の数値も脈拍も高いってこと?」
「そのとおり。しかも、翠葉、今秋斗先輩と一緒にいるんだよね……」
「……手、出されたんじゃね?」
 的確な指摘が入る。
「……やっぱそう思う?」
「……先輩も男だし、もしも本当におまえの妹が好きなら手くらい出すだろ」
 俺は大きなため息をついて机に突っ伏す。
「おまえ、相変わらず妹溺愛してんのな? どんだけかわいいんだよ。この間の……簾条さんだっけ? あの子とどっちがかわいい?」
 簾条さんと翠葉かぁ……。はっきり言って、ふたりはタイプが全然違うんだよな。
「そういえば先日秋斗先輩の弟が送ってくれたメールがある。実はさ、今年の姫なんだ」
「はっ!? 姫って、あの学園行事の!?」
 環は幼稚舎から藤宮のため、学園内での行事には詳しい。
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