光のもとでⅠ
 きっと、音や振動に意識を集中させているのだろう。
 邪魔はしたくない。けど、訊きたいと思う。
「……本当に音が好きなんだな」
「うん」
 翠が今何を感じているのか、そんなことまで知りたくなる俺は、いったいどこまで知ることができたら満足できるのだろうか。
「音からは何が伝わる?」
 翠は不思議そうな顔で俺を見ると、ゆっくりと話し始めた。
「……そうだな、色、でしょ? 温度、でしょ? 質感とか、色々……。奏者の感情とか作曲した人が伝えたかった旋律やリズム、本当に色々」
 目をキラキラと輝かせながら答えた。
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