光のもとでⅠ
 奏者の感情、ね……。
 でも、俺の気持ちには気づかないんだろ?
 何かに気づいたとして、「誰か好きな人がいるんだろう」とかその程度。
 むしろ、それに気づけていたら上出来だ。
 
 通路の先から足音がふたつ。
 姿が見えてから翠がはっとした顔をした。
「ツカサ、もしかして図書棟に戻るのって、私の診察も込みだったっ!?」
 もともと話してはいなかったし、今さら気づいても遅いし……。
 顔を背け、相馬さんと翠の会話を聞いていた。
「ったく、待機してたのによぉ。元気なくせして俺に足を運ばせるとはいい度胸だ」
 あぁ、もっと言ってやってください。
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