光のもとでⅠ

26~29 Side Kaito 01話

 夕飯のあと、リビングでくつろいでいたら携帯が鳴った。
 ディスプレイを見て首を傾げる。めったにかかってくることのない人物からだったから。
「秋兄、なんの用だろ?」
「あら、秋斗が電話なんて珍しいわね?」
 母親である紅子(こうこ)さんも物珍しいものを見る顔でディスプレイを覗き込んでいた。
「はいはーい、なんだよ電話なんて珍しい」
『一応報告しておこうと思って」
「……何をでしょうか?」
『俺、翠葉ちゃんの彼に昇格したから』
「えっ!? マジっ!?」
『ま、そういうことだからよろしく。それと、午後から夕方までは翠葉ちゃん俺のところで預かることになってるから』
「ええええっ!? 俺のところって秋兄のところっ!? またなんでっ!?」
『栞ちゃんがいないから?』
「…………お兄様、僕はですね、お兄様のことをとっても信用しておりますので、病人には手ぇ出しませんよね?」
『くっ、それ全然信用されてる気がしないよ。ま、どうかな? 手を出す度合いにもよるかな』
「なんでもいいけどさ、翠葉泣かせたら許さないよっ!?」
『わかってる。用件はそれだけだ。じゃぁな』
 通話は一方的に切られた。
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