光のもとでⅠ
 少し自分を立て直したいと思った。
 あまりに心も思考も乱れていて、このままでは自分が自分の足を掬いかねない。
 それだけはごめん被る。
 結果、翠のメイク直しを口実に側を離れた。
 離れる直前、視界の端に警備員藤守武明を捉える。
 視線を送ると、「承知」の意味で一度頷いた。
 別に側を離れるからといって完全に目を放すつもりはない。が、自分以外に誰かがついていてくれるのは正直助かる。
 この中ですべてをパーフェクトにこなすのは至難の業だ。
 しかも、警備員というのはクラスメイトや実行委員とは違い、一定の距離を保った場所にいる。
 今の俺にはその距離がありがたく思えた。
 翠に、自分以外の男が必要以上に近づくのを許せそうにはない――。
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