光のもとでⅠ
 気になる人間のあれこれはとりあえずなんでも把握しておきたい口。
 それが、今日は俺よりも翠から離れた場所で作業をしている。
 それがどんなにイラつくことかはわかるつもり。
 昇降機が降りてくると、簾条は俺より先に駆け寄った。
「翠葉っ、具合悪いっ!?」
 今は男も女も関係ないようだ。
 自分以外の人間を皆邪魔だと思う。
「違……ごめん、なんでもないの。……本当に、なんでもないの」
 翠は簾条にも言うつもりがないらしい。
 本当になんなんだ……。
 この場だから言えないのか、誰にも言うつもりがないのか……。
 それすら見当がつかない。
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