光のもとでⅠ
 俺は「使え」という意味で翠にハンカチを押し付ける。
 ここまでくると、親切も何もかもが押し売りに思えてくる。
 さらに、俺は見返りをも要求する。
「あとで――あとで、絶対に吐かせるからな」
 翠は眉を寄せて困った顔をした。
 それがステージに上がる前に見た翠の表情だった。
 なんで……。
 なんで俺があんな顔をさせる羽目になる?
 なんで俺ばかりがあんな顔を見なくちゃいけない?
 冗談じゃない――。
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