光のもとでⅠ
「好き」なんて言葉で伝えきれるものじゃない。
「愛している」なんて言葉でもない。
 何かもっと別の言葉を教えてほしい――。

 俺の歌が終わればスクエアステージで生徒会男子の歌が始まる。 
 奈落へ戻れば少しは話す時間が取れると思っていた。
 昇降機を降り、真っ直ぐ翠のもとへ向かう。
「翠」
 声をかけたが、気づいているのに俺を見ない。
 床に視線を固定したまま無言。
「今ここで言わせるつもりはない。でも、夜、マンションに帰ったらゲストルームに行くから」
 人前で話せとは言わない。
 けど、人さえいなければ話してくれるだろう。
 そう思っていた俺は甘かった。
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