光のもとでⅠ
 その場は離れたものの、そう離れた場所にいるわけではなく、数メートル離れたところから翠を見ていた。
 両脇には佐野と実行委員がついていたが、そこに茜先輩が来るとクラスメイトふたりは立ち上がりその場を去った。
 読唇ができる距離にはいた。
 が、茜先輩にそれをしたらいけない気がした。
 あの人が抱えているもの――人に話そうとしないものを俺がこんな方法で知っていいわけがない。
 だから、何も見ないように、と静かに目を閉じた。
 どれほど雑然とした場であっても、邪な気が混じればすぐに気づく。
 今はその部分だけに意識を集中していた。
 そろそろ茜先輩はスタンバイに入るだろう。
 目を開けると、ちょうどそのタイミングだった。
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