光のもとでⅠ
 翠は茜先輩の後ろ姿をずっと見ている。
 その翠のもとにはまだ佐野も実行委員も戻ってきてはいない。
 今なら少し話せるかもしれない……。
 そう思って翠に近づくと、
「茜先輩っ」
 翠が大声を発した。
 こんな人がたくさんいる中で翠が大声を発するのは初めてではないだろうか。
 周囲の視線を集めるのは必須。茜先輩も驚いた様子で振り返った。
 次の瞬間、翠は勢い良く立ち上がる。
 何も考えずに立ち上がったと思う。
 そんなことをすれば眩暈を起こすのに。
 咄嗟に翠に手を伸ばし腕を掴む。
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