光のもとでⅠ
 けれど、翠は俺から離れ、茜先輩を求めるように前へ踏み出した。
 茜先輩から「大丈夫」という視線をもらって俺は腕を放した。
 翠はそのまま茜先輩に抱きつく。
 ふたりは何か言葉を交わしてすぐに離れた。
「司、翠葉ちゃんをお願いね」
 無言で頷き、再度翠の腕を取る。
 やっと平衡感覚や視界が回復したのか、手にかかる体重が少し軽くなった。
 翠は座っていたときと同じように、ずっと茜先輩の背中を見ている。
「用が済んだらな座ったほうがいいと思うけど?」
 とりあえず座らせたかっただけ。
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