光のもとでⅠ
 佐野が走ることを注意する人間はいなかった。
 この場で一番の俊足を持つ人間に任せるのが最善だからだ。
 佐野の足なら間に合うだろう……。
 漣と翠がふたり並び、茜先輩をステージへ送る。
 不穏な空気には奈落中の人間が気づいていた。
『間に合いましたっっっ』
 息の上がった佐野からの通信に、俺の周りが沸き立つ。
「佐野くん、まじでありがとう!」
 放送委員が言えば、
『こんなことでお役に立てるならいくらでも』
 と、俊足大安売りの言葉を返す。
 その佐野の姉ふたりが翠と話していた。
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