光のもとでⅠ
「っ……!?」
 相手の男は、さっきの演奏でベースを担当した風間。
 翠より先に風間が俺の視線に気づく。
 俺は目を逸らすことなく風間に視線を固定する。
 風間は指切りをした状態で翠に声をかけた。
 相変わらず、読唇が完全にできる状況にはない。
 人が行き交う中、翠とも目が合ったがそこでタイムオーバー。
 昇降機が上昇を始め、俺は苛立ったままステージに上がった。

 俺は至上最高と言えるほどの苛立ちに犯されていた。
 どう都合よく解釈しようにもできない。
 翠が自分から移動したように見えた。
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