光のもとでⅠ
 首筋はかなり弱そうだった。鎖骨まで指を伸ばしたかったけど、いかにもすぎてやめておいた。
 彼女の華奢な鎖骨はこれ以上にないほどそそるものがある。
 キスをしているとき、胸もとにまでキスを落としそうになった。
「なんて甘美で恐ろしいトラップかな……」
 そんなところにキスをしたら自分を抑えられる気がしない。
 でも、やっぱり……というか、こっち方面はまったくの無知だな。
 それを教え込むっていうのも楽しみのひとつではあるけれど、そのたびにうろたえて泣かれてしまいそうな気がする。
 そうしたら、また俺の胸におさまって泣けばいい。
 いつか、俺の体温が彼女の精神安定剤になれる日はくるだろうか――。
 思考の糸を放っておくと、そっち方面にしか頭が回らなくなる。
 いい加減仕事をしないと……。
 気持ちを切り替えるのにティーパックのハーブティーを淹れに席を立った。
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