光のもとでⅠ
 翠葉にとっても俺にとっても、今まで生きてきた時間以上に静さんは母さんを想っていたことになる。
 その膨大すぎる時間に言葉を失ってもおかしくはない。
 けど、なんとなく――「藤宮の男に惚れられるということはそういうことだよ」と提示された気がしたのは俺だけだろうか……。
 しかも、翠葉の場合、秋斗先輩と司のふたりに、だ。
 途端に翠葉の行く末が心配になってくる。
「翠葉ぁ……肉食獣に奥さんを始終狙われていたお父さんはだな、胃が擦り切れるくらいに肝を冷やす二十七年だったぞー?」
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