光のもとでⅠ
「……そうかも――でもっ、若槻さんが嫌いとかそういうことじゃなくて――」
 慌てて弁解する彼女に若槻は優しく声をかけた。
「ありがと。でもって、秋斗さんのことも嫌いだから嫌なわけじゃなくて、怖かったり恥ずかしかったりするだけなんでしょ?」
 次の瞬間、玄関のドアが開いた。
 ガツ――びっくりした俺の手から携帯が落下する。
 玄関に現れたのは司だった。家でシャワーを浴びてきたのだろう。ずぶ濡れだった形跡は跡形もない。
 司は俺を視界に捕らえつつ、三兄妹が話す部屋のドアを見る。そのまま無言で俺に視線を戻した。即ち、「そんなところで何してる?」だろう。
 その視線を煩わしいと思いつつ、落下した携帯を拾う。彼女の数値を見ようと思ったらディスプレイに何も映らなかった。
 は……?
 何を押してもうんともすうとも言わない。
 ……まさか。まさかねぇ……。こんな低い場所から落下したくらいじゃ壊れないだろう……。
 そうは思うものの、事実、うんともすうとも言わない携帯が手元にあるわけで……。
 腐っても精密機器ということだろうか。内部基板がいってしまっていたら修理に出す必要がある。
 そんなことを考えていると、司は俺を横目に見ながらドアを軽くノックした。
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