光のもとでⅠ
 弁当を受け取り翠と図書室の奥へ移動したわけだが、目の前の翠は弁当の蓋も開けずにじっと弁当を見つめている。
「今日は母さんが作った弁当だから昨日ほど豪華じゃない」
 そうはいっても、落ち着きを失った翠は俺と弁当を交互に見る。
 そして、何か大切な箱でも開けるように蓋を取ると、今度は中身を注視した。
 自分の弁当を開けてみたものの、別段珍しいものは入っていない。
「そんなにじっくり観察するほど大したものじゃないだろ?」
「えっ!? そんなことないっ。情報たくさんっっっ」
「……情報って何? ただの弁当だろ?」
「え? あ、う……なんでもない。情報は関係なしで……」
 翠が口にしてなんの意味もないわけがない。
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