光のもとでⅠ
 本当に何ひとつ珍しいものは入っていないと思う。
 翠の弁当箱が赤いということもあり、レタスやブロッコリーの緑がやけに映える弁当であること以外は……。
 弁当箱を指でなぞる翠に、
「それ、姉さんが幼稚部のときに使っていた弁当箱だって」
「湊先生の?」
「そう。姉さんの、幼稚部、のときの弁当箱」
 これだけ強調して話しても、俺の伝えたいことは伝わらない。
 翠はきょとんとした顔で俺を見ていた。
「翠は今いくつだっけ?」
 その一言で気づいたらしい。
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