光のもとでⅠ
 廊下に座ったまま点灯しないディスプレイを眺めていた。
 ……ずっとここにいても仕方ないか。
 立ち上がろうとしたとき、またしても玄関が開く。
 今度は栞ちゃん。
 無言で見つめてくるのは司と同じ。ただ、両手にいっぱいの荷物を抱え、目をまん丸にしている。
 栞ちゃんも表情で話ができるタイプだな、と思いつつ、迎えに出てきた司と分担して荷物をキッチンへと運んだ。
 栞ちゃんから荷物を受け取った直後、栞ちゃんが開けたドアの隙間から彼女を見ることができた。
 彼女の目は赤く充血していた。
 これは俺が泣かせたことになるんだろうな。
 そう思えば声をかけることはできなかった。
 リビングで往生際悪く携帯をいじっていると、
「……壊れたの?」
「おまえが玄関開けなかったら携帯落とすこともなかったんだけどな」
「それ不可抗力だし。第一、あんな低い場所から落下して壊れるなんて運が悪いとしか言いようがない」
 素っ気無く答えると、司は自分で淹れたであろうコーヒーを飲みながら読書を開始した。
 彼女を怯えさせて泣かせてしまうは携帯は壊れるは、思いどおりにならないことにむしゃくしゃしていた。
 とりあえず、携帯の復旧作業だけは急がないといけないだろう。
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